ストーリー
はじまり 新たな地域医療の創造に向けて
久留米大学は、1928(昭和3)年に、九州医学専門学校として産声をあげました。創立時には、ブリヂストンの創業者である石橋正二郎氏と兄の徳次郎氏により、広大な土地と3階建ての立派な建物が寄贈されました。その建物は、現在も大学本館として歴史を刻み続けています。
その後、医学部は順調な発展を遂げ現代医学の最先端研究・教育拠点となる一方、1955(昭和25)年の商学部設置を皮切りに、87年に法学部、92年に文学部、94年に経済学部、そして2017年に文医融合を掲げた人間健康学部を設置し、総合大学としてもその陣容を誇っています。石橋正二郎氏の郷土・久留米を愛する熱き思いは、今も本学の教育・研究・医療・地域貢献の営みの中に息づいています。
近年、医師の働き方改革や診療報酬改定などの病院・診療所の構造的問題に加 え、2020年に発生したCOVID-19による医療施設の緊急応対など、医療を取り巻く 環境や社会情勢は医療界に大きな変革を求めています。
久留米大学は、まもなく設立100年を迎えるに際し、本学医学部同窓会会員をはじめとする開業医のみなさまへの支援を通じた地域医療基盤の維持・発展への貢献と、COVID-19発生以降のニューノーマルへの積極的な対応、さらに新たな地域医療の創造をミッションに掲げたコンサルティングファームを学内に発足させました。これを機に、地域医療のさらなる発展と、新たなカタチの医療の提案を通じた地域貢献を目指します。
構造的問題の解決へ 未来のあるべき医療への方程式
これまで病院や診療所といった医療施設の経営は、その診療内容の向上に注力しながらも、増加する潜在的患者数や診療報酬に支えられて、ながく安泰でした。 しかし、この間の少子化・高齢化や地方の衰退と都市部への人口移動といったマクロ要因に加え、家族構成・ライフスタイルの変容や情報の拡散と患者意識の変化といったミクロ要因により織り出される社会の変化は、財政の逼迫とあわせて、医療施設経営に全般的な再考を迫っています。こうした変容への対応とその解決は、医療分野だけの模索ではすでに困難な状況にあり、関係する人文・社会科学分野の英知をも結集しその解決を図る必要があると私たちは考えます。
そこで、医系大学でありながらも、総合大学として人文・社会科学分野を有する久留米大学の特長を生かし、本学でしかできないオンリーワンの「文医融合」研究を実施する組織を医学部内に「医療経営研究センター」として設置すると同時に、その成果を社会へ還元するためにこの久留米メディカルアドバイサリー&コンサルティング Kurume Medical Advisory & Consulting(K-MAC)を立ち上げることになりました。このK-MACを通じて、必要とされる医療施設を支援することで、地域医療基盤の維持・発展に貢献ができると私たちは考えます。
久留米大学の掲げる「文医融合」というコンセプトは、久留米大学100年構想の重要なテーマのひとつであり、さまざまなプロジェクトがそのもとで進んでいます。また、久留米大学医学部では、大学病院・医療施設の経営分析研究とその成果の大学院教育への応用や研究成果のK-MACを通じた社会への還元を、未来のあるべき地域医療像へ近づける取り組みの道筋として位置付けています。久留米大学全体としても、医療施設やそれに関連する組織への人材供給や社会人のリカレント教育(学びなおし)の提供を通じて、新たな地域医療の創造にチャレンジしていきます。